2008年10月31日

人工に膾炙せず

バターは作るのが難しいのかと思っていたが、けっこう簡単に手作りできることを知り驚く。ただし本気で作る際には一時間ほどビンをシェイクし続ける必要があるようなので、翌日筋肉痛になるのを厭わない人向けである。

化学を勉強してありがたみを感じたのは、マーガリンの製法を知ったときだった。マーガリンは有機化学でいう「硬化油」を味付けしたもので、硬化油は不飽和脂肪酸(二重結合や三重結合を持つ有機化合物の一種)にニッケルを触媒として水素を付加させて製造する。その人工的製法が気味悪くて、以来マーガリンは極力口にするのを避けてきた。

近年では医学的な見地からもマーガリンの危険性が取りざたされている。やはり不飽和脂肪酸を硬化油へと改質する過程に問題があるらしく、そこで天然にはほとんど存在しない「トランス脂肪酸」が多く生成されてしまう(天然の不飽和脂肪酸はほとんどがシス型である)。トランス脂肪酸は心臓疾患のリスクを高め、脳の認知機能にも悪影響を及ぼす可能性があるという。

私が幼い頃は動物油由来のバターより植物油由来のマーガリンの方が身体によいと言われていたのだが、世の中の基準とはなんとも脆いものだ。



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2008年10月26日

「十中八九の数学」図形編問題PDFup

「十中八九の数学」図形編(10月26日)の問題と略解をupしました。今回は筑波大学附属高校で1996年に出題された円の問題です。5分で片づけましょう。

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2008年10月25日

YouTubeに「十中八九の数学」解説動画up

「十中八九の数学」2008年10月19日出題分の解説動画を(6)から(10)までアップロードしました。

YouTubeの動画一覧はこちら。

それと、遅ればせながら10月19日分の問題PDFに解答をつけました。2枚目をご覧ください。

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2008年10月24日

「10分間の英文法問題」第3回目

「10分間の英文法」3回目です。早稲田の問題は語彙レベルが大学受験生向けではありません。私も迷うものがありました。

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YouTubeに「十中八九の数学」解説動画up

「十中八九の数学」2008年10月19日出題分の解説動画を(1)から(5)までアップロードしました。

YouTubeの動画一覧はこちら。



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2008年10月23日

サイコロの真実

マルティン・ガードナー『新版 自然界における左と右』(紀伊国屋書店、1992年)によれば、市販されているサイコロの目には向きがあるという。これは知らなかった。手品師やイカサマ博打をやる人はその事実を知っていて、素人が結構騙されているそうだ。



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2008年10月22日

私学中退者が増えている

病院の待合室で週刊誌を読んでいたら、『週刊新潮』にこんな記事が出ていた。

金融崩壊、明日の地獄/私立中高「中退者続出」で「国公立」に受験生が殺到

この記事によれば、私学を中退して公立の学校に転校したとしても、それなりの学費は必要になるので、結局生徒自身がアルバイトに出ざるを得ない。最終的に公立の学校も中退を余儀なくされるケースが多いという。長い間、教育費は家計の中でも聖域のような位置づけになっていたが、その回収見込みは如何ほどだろうか。

競争らしい競争もなくのんびりやってきた教育産業も、今後は仁義なき戦いがあちこちで勃発しそうだ。


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金平糖の角はフラクタル

金平糖を最後に食べてからどれくらいの日数になるだろうか。金平糖というのは、イガグリやウニのように角が突き出た球形状の砂糖菓子である。私はてっきり、あの角は型枠に入れて作っているのかと思っていたが、実際にはそうではないという。職人が飴砂糖を銅鑼の上で回転させながら、2週間ほどかけて生やしていくものらしい。

この不思議な現象は自然科学者の関心を引くようで、かの寺田寅彦も金平糖の角について随筆を残している。

近年では東北大学理学部の研究者が金平糖の角について本格的な実験を行っている。詳細はホームページに掲載された実験結果とその考察を参照していただくとして、ここで興味深いのは次の性質だ。


あるとき実験中に、偶然に(本当はミスで)ショ糖液がドラムの内壁面に直接付着し、そこで結晶化してしまったことがあった。そのとき、すでにドラムの内部には角の生えた粒子が存在していたが、ドラム内壁の結晶にも、金平糖と同様の間隔で角が生えているのが観察された。さらに、もっと積極的に、小さな種粒子から成長させた小さな径の金平糖の中に、その数倍の径の粒子をひとつだけ混入させると、大きな粒子の表面には、小さな粒子と同様の間隔の角が生え始めた。つまり、金平糖の角は、あたかも凸版(あるいは凹版?)印刷のように、周囲の粒子(や壁)にコピーされているように見える。

条件が適切に設定されれば、粒子サイズはほぼ単一の分散のまま成長するので、自分自身と同様な角が生えた粒子同士で、自己触媒的に、角の情報を「プリント」し合うことになるだろう。その際に、ショ糖液は、インクの役割とともに、自らが結晶化することによって、「活字」を形成する役割も演じるはずだ。
(参照:金平糖の成長プロセスと形の選択(WEB版*)@東北大学大学院理学研究科


口に入れればすぐに溶けてしまう金平糖の角も、現代数学に通じる端緒がその成長の過程に隠されているのだとすれば、もうすこし口の中でピリリとした粘りを見せてくれてもよさそうなものだ。


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2008年10月19日

十中八九の高校受験数学・やや難の計算編

「十中八九の高校受験数学」を更新しました。今回は2007年の計算小問編ですが、やや難~難レベルを揃えたので、結構手こずると思います。動画の解説を公開予定です。解答は明日公開。



(参照:十中八九の数学2008年10月19日


過去問については、atwikiの「十中八九の数学」ページにまとめてあります。


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2008年10月18日

170年前のPunchをタダで読む

昨日紹介した イギリスの風刺漫画雑誌 Punch のバックナンバー(1841年~1923年)は「プロジェクト・グーテンベルク」という英語の無料サイトで挿絵付きで保存されていることが分かった。世の中本当に便利になったものだとつくづく感じる。これから毎日読み進めてみようと思う。

なお、他のバックナンバーを読みたいときは、検索欄(Title Words)に「Punch, or the London Charivari」と入力すればよい。

(参照:1841年のPunch創刊号@プロジェクト・グーテンベルク


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2008年10月17日

「A if not B 構文」はガラパゴス英語の象徴

大学の図書館で100年前に英国で出版されていた風刺挿絵雑誌の Punch を読んだとき、今日を表す todayto-day になっていて大いにびっくりしたものだが、言葉は生き物のようなもので、常に変化を続けて止むことがない。

今日作成した英文法の問題の中に、「A if not B」構文がある。私はこの構文が出てくると高校生の頃から頭が混乱してくるのだが、大学受験用の参考書を開くと、通常「Bとは言わないまでもA」と解説されている。ところが最近のネイティブスピーカーの間では、「A、もしかしたらBくらいは」として異なる解釈がなされることが多いようだ。

受験用英文法の著作は古い古典的問題集をトレースあるいは焼き直しして編集されることが多いようで、現代の英国人や米国人なら日常生活で決して使わないような表現がゴロゴロ転がっている。この現象を大陸から隔絶された孤島で生物たちが独自の進化を遂げたガラパゴス諸島になぞえらえれば、日本の受験英文法はまさしく「ガラパゴス英語」と呼ばれるに相応しい。

高校受験英語にせよ、大学受験英語にせよ、基本的に外国人と日常的な情報を交換するための英語ではなく、受験の中で他者と差をつけるための道具と化している。そういう犠牲はもう私たちの世代までで終わりにして欲しかったのだが、英語を教える側や問題を出題する側の頭が旧態依然のままだから、結局次世代にガラパゴス英語が伝播してしまう。なんとも恥ずかしい限りだ。


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「10分間の英文法」コーナー新設!

センター試験より小難しい英文法の問題を解きたいという希望があったので、手間暇かけて英語の文法課題を作っています。せっかくなので「10分間の英文法」と銘打ってインターネット上でも公開することにしました。とりあえず今月つくったPDFとその解答PDFを2つ置いておきます。dydx123@atwikiからアクセスしてください。
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高校受験生向けの英文法問題も遠くないうちに準備します。


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2008年10月16日

志望校選択にあたって

入試シーズンが近づいてきた。

この時期からは机の前に入試問題集を並べてどしどし過去問を解いた方がよい。机の上に学校名の入った問題集が転がっているだけで、随分と心境が違うものだ。

模試の成績が少々悪くても、あまり気にする必要はない。今の時期は数点で偏差値や順位が大きく変動する時期だ。頑張ればいくらでも挽回可能な位置にある。どうしても志望校に入りたければ、ランクを下げたりせずその決意を貫くべきだ。もちろん、その代償として更なる努力と、その保険として滑り止め校の設定を忘れてはいけないが。

過去問を解けば、「この学校に是非入りたい」とか「この学校に入ってくる奴とは付き合いたくない」とか、そういったことが身にしみて分かってくるだろう。入試は能力だけでなく適性を測る試験でもある。

それから、受験しようと思う学校や学部は徹底的に調べ尽くすべきだ。他と比較してどのような特徴があり、どのような教育が行われているか。どんな教員がいて、どんな授業を行ってしているのか。

大学受験生なら、受験しようと考えている学校のホームページにアクセスして教員スタッフを確認し、その名前を片っ端からGoogleで検索してみるとよい。もう何十年も論文を書いていなかったり、学会で何の発表もしていなかったりといった専任教員がザラにいる。そういう学校や学部にまともな教育は期待しない方がよい。パンフレットから読みとれない非公式の大学情報もまた重要である。


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2008年10月15日

十中八九の数学(関数編)

ひさしぶりに「十中八九の高校受験数学」を更新しました。今回は関数編で、2001年慶応女子高校の入試問題です。レベルはやや難くらいか。解説ページに番外編をつけておきました。


(参照:十中八九の数学2008年10月15日


過去問については、atwikiの「十中八九の数学」ページにまとめてあります。


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2008年10月14日

国語の読解力は心がけの問題

昨日、国語の指導の件で問い合わせを受けた。国語の指導は他の科目に比べて断トツに難しいというのが私の印象だ。受験までの日程が短いのと普段は国語を指導していないことを考慮し、大変申し訳ないが今回はお断りさせていただいた。

国語の文章読解力や論理的理解力は一朝一夕で身につくものではない。普段から他者の意見に耳を傾け、それを受け入れる心がけが何よりも重要だ。他人の思っていることに関心が向かず、何事につけても我を通そうとする人は、どんなに優れた教師から教えられても無駄だし、どんなに評判のよい教材を利用しても、そこから得られるものは何もないだろう。

このような心がけは、国語という一科目にとどまらず、全ての科目の理解力に影響を及ぼす。受験生にとっては国語の学習が最も手薄になりやすいものだが、実は学問の根幹をなす最も重要な科目だ。国語の勉強は当たり前すぎて、目に見える結果を手早く得たいと焦る者には国語の読解を鍛えることに特別な意味を見いだせないという事情もあるのだろう。

国語の読解力は「心がけ」次第でいくらでも変わる。相手の気持ちになって思考すること。それ以上でもそれ以下でもない。国語の指導は日常的な習慣のレベルまで目線を下げる必要があり、短期集中の指導ではどうしようもならないというのが、私の偽らざる感想だ。


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2008年10月12日

勉強は無駄・失敗・試行錯誤の積み重ね

中学受験や高校受験で学校を決める際、卒業生の進学実績は重要な選考要素の一つになるだろう。受験シーズンの前後になると、週刊誌が軒並みその特集で異常な盛り上がりを見せる。

だが、実態はどうだろうか。進学校で行われている授業と進学実績にはあまり相関性がないというのが私の見解だ。はっきりいって、進学実績は塾や予備校の実績とみてよいと思う。私の経験では、難関と言われる学校になればなるほど、授業内容は受験勉強と直結しなくなる。学校側は最初から塾との役割分担を前提として授業を進めているわけだ。

だから、艱難辛苦を経て難関中高に入ったとしても、結局はまた塾や予備校のお世話になるハメになる。痒いところにまで手が行き届いたサービスを提供してくれる中学受験塾や高校受験塾を経験していれば、自称「面倒見のよい」学校側の対応はなんとも頼りなくお粗末に映ることだろう。また、塾が不安を煽り立てる広告を出して危機感を一層増幅させる。「マッチポンプ」とはまさしく教育業界のことを指すといってよい。

もう少し時間にゆとりをもって、長い目で教育を考えることはできないだろうか。今の教育システムはあまりにも効率性に特化しすぎていて、早熟をよしとし大器晩成型の人格形成を拒絶する風潮がある。それだけ社会に余裕がなくなってきている証拠だろうか。一見非効率に映る難関進学校の授業も、効率のみを追及する受験教育へのアンチテーゼとして行われているのだと受け取れば、それなりに意味があると私は思う。つまり、勉強とは無駄と失敗と試行錯誤の積み重ねであるということだ。



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2008年10月9日

英文法の難問

先日、英語の文法問題を作っていて、難渋させられる問題にあたった。

期限が来たのに彼は支払いができなかった。【慶応大学】
He failed to make payments when they were (    ).

病気になって以来初めて今日思い切って戸外に出てみた。【中央大学】
Today is the first time I've (v   ) out of doors since my illness.

こういう問題を通じて受験生の何を見ようとしているのやら。解けたからといって、嬉しくなるようなものでもあるまい。


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2008年10月8日

大科学者は自嘲気味に自分を語る

別の日記で9月25日に紹介したが、黒田和夫『17億年前の原子炉―核宇宙化学の最前線』講談社ブルーバックス、1988年)を読み始めた。著者の黒田教授(アーカンソー大学)は1956年地球上に天然の原子炉が存在することを予言していたが、それから約20年後にガボン共和国オクロのウラン鉱床で天然の原子炉がかつて存在した痕跡が発見され、一躍脚光を浴びた人だ。

冒頭で黒田氏の学生時代が自嘲気味に紹介されている。この手の本にはハズレがないので期待している。

ある日、私が(東京帝大)化学教室の玄関に入ると、「英国のケンブリッジ大学のアストン博士が来日して、昭和11年6月13日午後4時から法文経大講義室で同位元素に関する特別講演を行う」という掲示が出ていた。アストンは電子の発見で有名なトムソンの弟子で(中略)、彼は「質量分析と同位元素」に関する研究で大正12年にノーベル化学賞をもらっている。大正12年は関東大震災の年で、相対性理論のアインシュタイン博士が日本にやってきた年でもある。(中略)

6月13日の土曜日には大学に出かけたが、アストンの講義の始まる午後4時までにはだいぶ時間があった。幸い天気もよかったので、化学教室の屋上にのぼって、前日買い求めたアストンの本の読み残りの所を読んでいた。その日は葉桜の季節も過ぎて初夏の日差しもすがすがしく、安田講堂から三四郎池のあたりの眺めがひときわ美しかった。

すると、コトコトと階段をあがってくる人の足音がして、東大地震研究所の石本巴四所長が、一人の外国人を案内して屋上に登ってこられた。その外国人がアストン博士その人であることは疑う余地もなかった。そこで私は思いきって二人に近づいて、おじぎをしてから手に持った本を見せ、片言の英語で、「私はこの大学の1年生で、いま先生の本を読んでおります。つきましては記念のためにサインをして頂けませんか」と頼んでみた。

アストンはいかにも嬉しそうに笑って「F. W. Aston, 13/6/36」と書名をした上に、私と握手までしてくれた。これは科学者として生涯を送ろうという志をたてたばかりの、当時19歳の私にとっては誠に幸先のよい門出であった。(pp.11-12)

これに味をしめた黒田教授は、翌年ニールス・ボーアが特別講義を行うために東大にやって来たときにもサインをもらおうとした。4月23日のことである。


ボーアは大正2年(1913年)に提出した原子構造に関する研究で有名な理論物理学者で、アストンがノーベル化学賞をもらったのと同じ年の大正12年に、ノーベル物理学賞をもらった人である。(中略)

4月23日には早めに化学教室に行き、屋上にのぼってボーア教授がやってくるのを待っていた。ところが何時間待っても、今度は誰も屋上へ登ってこない。仕方がないから諦めて会場にゆき、例によって最前列に陣取ってボーア先生の話をきいたが、彼の英語はデンマーク訛りが強いせいか、言っていることがわからない。また、あまり面白くもない。しかし話が終わったら、せっかく丸善に行って買ってきた本だから、それに署名してもらうつもりで待つことにした。

ところがボーア教授と理研の仁科芳雄博士が、黒板の前で込み入った数式をかきながら長談義をはじめ、そのまわりを大勢の物理学者たちが取り囲んで、いつまでたっても終わらない。しびれを切らして二三人の人を押し分けて前へ出て、「大切な討論中に失礼ですが、ちょっとこれに署名してください」とボーアに頼んでみたら、彼は黙ったまま、「Neils Bohr, Tokyo 23-4-37」と書いてくれた。そばでは仁科先生が苦笑いをしながら見ておられた。

そこでやれやれと思ってその日は家に帰り、その翌日二日目の講義をきくために会場に行ってみると、「講義の前後にみだりに講演者に近づいたり、話しかけたりしてはいけない」という大きな掲示が出ていた。ニールス・ボーアと仁科芳雄という世界の大学者たちの討論に割って入るというような大それたことをした学生は、近代日本の歴史を通じて多分私だけであろう。(pp.27-28)

しかしまもなく第二次世界大戦が始まり、東大に残って化学研究を行っていた黒田氏も戦争に勝つための軍事協力を余儀なくされる。
戦争がはじまってから2年ばかりたった頃のある日、天皇陛下が東大理学部に視察においでになることになった。私たちの研究室では何百トンもの有馬温泉の温泉水の中から、微量成分のセシウムを分離・精製して、それを使ってつくった光電管を天覧に供する計画がたてられた。

この重要なプロジェクトに参加した私は、二日二晩、徹夜で実験したりして頑張った。ところが天皇陛下がお見えになった日は、「お前は用がないから大学に来なくてもよい」ということで、私はこの年になるまで、ついに天皇陛下にお目にかかったことがない。(p.30)
原子爆弾の研究でも面白い記述があるが、こちらは別の日記で触れようと思う。



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2008年10月7日

今日やる仕事

暴落中のNY市場を眺めながら徹夜仕事に取りかかる。

  • 英語の文法プリント(難問編100問)
  • 数学の三角比対策プリント(センター試験数IA用)
  • 十中八九の数学5回分


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2008年10月6日

家庭教師という仕事のやり甲斐

「情報を選別し処理する能力」について以前扱った。これは今の日本の学校教育で最も軽視されている分野だろう。しかし「情報を選別し処理する能力」を養うには、逆説的ではあるが、「情報を暗記する」過程を踏む必要がある。これは武道で言うと、それぞれ実戦稽古と型稽古の関係にあたるのではないかと思う。

大量の情報を暗記しようとする経験があってこそ、この世には自分にとって役に立つ情報と役に立たない情報が存在するのだという事実に気が付く。「必要は発明の母」というが、必要性のないところに工夫は決して生まれない。

私立や国立の学校教師の中には、暗記学習の弊害を危惧するあまり、とにかく調べ学習や発表学習に精を出し、独自性をアピールしようとする人もいる。だが、モノゴトには順序というものがあり、応用的な学習を先にやらせてもあまり意味がない。これは、基礎鍛錬のできていない者にいきなり試合形式の練習ばかりをやらせても、決して実力を向上させることができないのと同じだ。

書店に出かけると、成功者の体験談や勉強法のノウハウを高らかに書き連ねた本が山のように並んでいる。自分の勉強法に行き詰まり、改善を求めようとする者がそうした本を参照するのは、何も悪い話ではない。また、成績が伸びず苦しい思いをしていると、「どん底から這い上がった」とか「頑張ればなんとかなる」といった励ましを得たいときだってあるだろう。

だが、中にはよく位置づけの分からないものもある。たとえば明らかに通常の人間の能力を超えた天才について書かれた伝記や本人が綴る勉強本である。そんな例外的な人間の人生をいくら分析しても、その他大勢の凡人には何の役にも立たない。それでも買っていく人が絶えないのは、夢を得たいと願う人がいつの世も一定の割合でいるからだろう。


最近、「立身出世」という言葉を聞かなくなった。○○中学(高校)に入って△△大学に入り、□□会社に入社して……といった人生モデルがボロボロに崩れてしまい、子どもや子どもを持つ親ならとりあえず目指すべき理想の将来像が見あたらないのだ。

「家庭教師」は狭いニッチに特化した職業であり、少なくとも公共善に寄与する職種ではない。倫理的で前向きな心性を持つ人であれば、この仕事はきっと心苦しく感じられることだろう。だが、社会的・経済的に先行きの不透明な今となっては、子どものテストの成績を上げるとか、生徒を志望校に合格させてあげるとか、そういうささやかながらも目に見える幸福を与え続ける仕事の方が、強いやり甲斐を得られる気がしてならない。


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2008年10月4日

母校が亡校になる~銀行は私立学校にも容赦なし

教育の倫理と資本主義の精神はおそらく今の日本で噛み合うことはないだろう。しかし、赤貧にあえぐ学校が生徒にまっとうな教育を施せるはずがないというのもまた事実だ。

世の中のあちこちでお金の巡りが悪くなりつつある。その結果、多くの企業がいま、倒産の危機に瀕している。『週刊ダイヤモンド』が約4年ぶりに上場企業の「倒産危険度ランキング」という特集を組んだが、少し立ち読みするだけでも危機的な実態がよくわかる。

その背景として顕著なのが、「銀行の貸し渋り」である。p.58に興味深い記事が載っている。

経営状態が苦しくても、学校や病院といえば公共的な側面が強く、銀行もこれまで処理を先送りしてきた。それをいいことに、「借金は返さなくても大丈夫」などと豪語する経営者もごまんといた。

しかしここにきて、さすがに「もう借り換えには応じられない」「返せないなら潰れていただく他ない」などと銀行側も最後通牒を突きつけ始めているという。

業態が悪化した中小企業のみならず、最後の聖域ともいうべき分野にもメスを入れ始めた銀行の姿勢を見るにつけ、倒産の山はさらに高く積まれていく様相を呈しているといわざるをえない。

私立学校の経営者の中には、教育者と実業者の二足の草鞋を履いている者もちらほら見かける。こうした人たちが全て悪いとは思わないが、実業の方の経営が傾いて苦しい経営を迫られているような学校には、できるだけ入らない方がよいと思う。母校が亡校にならぬよう、学校選択の際には経営者の背景にも注意してあたりたい。


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2008年10月3日

木を見て森を見ず~暗記勉強はGoogleに勝てない

株式市場の動向は半年先の景気を先取りするという。現在、日本のみならずアメリカやヨーロッパの株式市場が大荒れになっている。上場企業が毎週のように倒産していく中、半年後の経済状況は今よりも更に酷いものになっている可能性が高い。もはやこれまでの常識は通用しない。先を見通しつつ、急激な変化にも臨機応変に対応する心構えが必要である。

世の中の枠組みやルールが明らかに変化し変わっていく中で、日本の教育システム(≒受験システム)は旧態依然のままだ。Googleさえあれば無限にかつ即座に知識が得られる今となっては、暗記主体の学問にどこまで現実的な意味があるのかよくわからない。今本当に求められているのは、与えられた情報や獲得した情報をどう分析し、自分の行動にどう応用していくかである。

私が生徒によく問いかけるのは、人口ピラミッドの見方をどう教わったかだ。塾や学校では「釣り鐘型」「星型」「ひょうたん型」といった分類法を教わるが、それが現実の社会生活においてどのような意味を持つのかは問いかけられる機会がない。今の日本の人口ピラミッドを見て、「これは釣り鐘型で人口減少社会を示します」程度の解説で済ます教師がいるなら、それは欺瞞といってもいいくらいだ。その人口ピラミッドの形が現実の生活にどのような影響を及ぼすのか、生徒に自問自答させる授業でなければならない。

医者は患者を診断して、既存の病名にあてはめたがる。そして既存の病気に応じた処置を行い、医者としての一仕事は終了というわけだ。しかしそのとき、医者は患者自身を診ていると言えるのだろうか。病気を病名に分類するだけで患者自身の具合は全く見ていないのではないか。そういう批判を何かの本で見かけたことがあるが、人口ピラミッドを見ていくつかのタイプに分類するだけで終わってしまうのも、まさに「木を見て森を見ず」である。

私は授業の際、日本社会が今の制度や仕組みを持ちこたえられるのはせいぜい今後十年くらいのもので、それ以降は日本に見切りをつけて脱出する人々が増えていく可能性があると忠告する。また、日本を脱出して外国で暮らすことになっても、きちんと現地で生活できる程度の語学力や技術を身につけておくよう警告している。ホリエモンがまだ現役だった2年前にこんな話をしても、子ども達は誰も信じてはくれなかった。今ならどうだろうか。

判断材料を大量に持っていても使いこなせないのは、判断材料を全く持っていないのとちょうど同じだ。そのことを身を以て教えてくれる指導者はそう多くない。



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2008年10月2日

「場合の数と確率」は高校生用の参考書を使え

高校受験生を教えていて痛感するのは、場合の数と確率の理解が非常に浅いということだ。高校受験用の参考書で場合の数を扱っているものを開いても、イマイチわかりにくい構図になっている。塾の指導も記号のPやCの計算技法を教えるだけで、核心部分までは配慮が行き届いていない印象だ。

場合の数と確率の分野を苦手にしている人で、比較的難しい問題が予想される高校受験生は、高校生用数学の基礎的な参考書(数IA)を開いて学習することを強くお勧めする。薄手でデザインがカラフルなものは大抵初学者向けの解説書なので、そのあたりを狙ってみるとよいだろう。明らかにそちらの方が分かりやすい。

余談だが、現行課程では高校に入学してすぐに「場合の数と確率」を学習する。苦手にしていると、1学期の定期試験で同級生と差が付くことになる。


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2008年10月1日

暗記の秘訣~他人のまとめたノートは覚えられない

日本の受験システムにおいて、最も重視されるのは暗記力である。

どうやれば暗記が早くできるようになるのか。どうやれば暗記を確かなものにできるのか。誰にもできるようなものではないが、暗記のノウハウを10代の頃身につけると、大人になってからも有益なものになるだろう。

覚え方には個人差があり、万人に当てはまる暗記法というものはない。私も当初は暗記が得意ではなく、暗記の秘訣を見いだすのに随分長い時間がかかった。ようやく辿り着いた結論とは、「自分でまとめ、自分で書いたノートでなければ、字面を覚えられない」ということだ。暗記が苦手でテストの点数を取りこぼしている人がいれば、ちょっと参考にしてみるとよいだろう。

お節介な先生にかぎって、自分で作成したまとめのプリント(レジュメ)を配りたがる。生徒にとってはなんとも親切で丁寧な授業のように思われるのだが、自分で内容を理解し覚える段階になると、これはなんとも悪影響を及ぼすことが分かる。

暗記の作業を点と線に例えると、まとめプリントに点と点はたくさん載っているが、それを結ぶ線がない。暗記すべき語句やキーワードに意味を持たせるのが線である。日本史や世界史でいう「歴史の流れ」である。これは他人から教わるものではない。自分で考え、自分で理解しなければいけない部分である。

線を自分で繋ぐ重要性が分かってからは、必ず教科書や事典を読んで自分でまとめる作業を怠らないようにした。イマドキの中高生や受験生は、学校の先生が生徒を甘やかしすぎていると思う。また、学参書も簡潔さや分かりやすさに訴えるようになり、読者に考える余裕を与えない。

学問に王道なし。これをやれば最短距離で成績が上がるとか、苦労なしで合格できるといったものはどこにも存在しない。学問の安売り言葉に騙されてはいけない。そういうノウハウで仮にうまく成功したとしても、その子にとっては自分で考える機会を失ってしまったことになる。

大きなコトを成し遂げるには、それに応じた苦労が必要である。そのことを忘れてはいけない。


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